投稿者 ガリノイズさん (2004.4.26 執筆)
ジョンの来日公演が行われることを最初に知ったのは、VIVA!ROCK誌上の公演スケジュールを本屋で見た時です。
私はその時、心臓が止まりそうになりました。もうその瞬間から行くことしか考えておらず、さっそくUDOに電話して、チケットを2枚予約しました。
お金を送って、実際にチケットが送られてくるまで「ちゃんと届くんだろうか?」とか考えだしたりして、不安でたまりませんでした。
私は新潟に住む高校生だったので、親を説得するのも大変でした。で結局、非常勤講師の先生に一緒に行ってもらうという苦肉の策を取らざるを得ませんでした。いざとなったら一人で行くつもりでしたが、そうは問屋が下ろさなかったわけです。
幸いその先生は音楽好きで、当日授業はありませんでしたから、選択肢はそれしかありませんでした。
コンサート当日、私は形の上だけでも学校へは行かなければならず、午前中の授業だけ受けて早退し、新幹線に乗って東京に向かいました。
新宿に着くと、まず音楽専科の広告で見たディスクロードという店へ行き、ジョンの「ユア・ドレス」の2枚組シングルを買いました。
厚生年金会館に着いてロビーに入ると、すでにたくさんの人がいて、「ジョンのことが好きな人がこんなにいっぱいいる・・・」と思ったら、それだけでまず感動してしまいました。
ツアーパンフの類いは置いておらず(若しくは売り切れたか?)、私はバッジを買いました。友達の分も買って、帰って渡したら、「すごくいいデザイン」って言われて、なんだか誇らしい気持ちになったのを思い出しました。
あと、入り口の所でゲイリー・ニューマンそっくりな人が日本人の女の人と話しているのを見たんですが、あれは誰だったんだろう?。
私の席は2階1列目のほぼ中央、ステージ全体が見渡せるすごくいい席でした(立つにはスペースが狭すぎたけど)。
客電が落ちて、いよいよコンサートが始まりました。
オープニングは「ランニング・アクロス・シン・アイス」。ただ、イントロが始まって「おーおーおー」とか歌いだしても、歌詞を歌うまではなんの曲かわかりませんでした。マイクを2本持っているのはわかりましたが。
この後、「ウォーク・アウェイ」、「マイ・ワイルド・ラヴ」と激しく歌いあげる曲が続き、その時思ったのは「この人は、決して歌がうまい人じゃないんだな」ということです。レコーディングではいろんなことをやってるんでしょうが、一発勝負のライヴではとにかくハッキリと発音し、大声で歌うということに主眼が置かれているように感じました。
「メタル・ビート」を聴くと、つぶやくようにうたう不安定なヴォーカルが印象的ですが、激しく歌う曲でも要は一緒だったわけです。
ウルトラヴォックスのライヴを聴いたことがある人ならそんなこと言わずもがななんでしょうが、なにせ私は初めてですから。
実際、ジョンのヴォーカルはバンドの演奏に埋没してしまうこともなく、最後までよく聴こえました。音程が少々外れようとも、まず歌を聴かせたいというジョンの思いが選曲にも表れていたということに最近気がつきました。
「クワイエット・メン」も一瞬なんの曲かわかりませんでした。あの印象的な間奏をアタマに持ってくることを予測していなかったからでしょう。
そしてミラーボールが回り出し、ステージが幻想的なライティングに包まれ、「ゴールデン・セクション」の最終曲「トワイライツ・ラスト・グリーミング」が始まりました。それは息をのむほど美しいものを目撃しているという感覚でした。間奏のロビン・サイモンの重厚なギターとジョンの口笛の絡みは今も忘れません。
ライティングがブルーに変わり、「ジャスト・フォー・ア・モーメント」へと続く流れは私にとって最初のハイライトでした。
「ゴースツ・オン・ウォーター」にも打ち震えました、この日の音響はとにかく低音が強調されていて、この曲のシンセサイザーの音が
体全体にビリビリと伝わって来た感触は今でも鮮明に残っています。
この感覚は、「ホエン・アイ・ワズ・ア・マン・アンド・ユー・ワー・ア・ウーマン」と「ザ・ガーデン」でも体験しました。
この時のツアーの音源は後にオフィシャルな形でCD化されていて、当然私も聴いたのですが、こんなに薄っぺらな音だったっけ?ってのと、カットされた曲がかなりあるということで少々不満でした。
ただ、音質に関してはホールで聴くのとは違うわけで、その点はしょうがないかなと思っています。
ちなみに私は横浜に住んでいた頃、元ウルトラヴォックスのファンクラブの人と知り合いになって、偶然同じ日のコンサートを見ていたという話になり、この日のライヴを生録したテープをもらったんですが、このレポートを書くにあたり久々に聴き直してみました。すると、CDより臨場感があってよかったんですね、ということでこのレポートは記録と記憶を再構築していることをここで告白しておきます。
さてコンサートの話に戻りますが、前出の「ホエン・アイ・ワズ・ア・マン〜」が始まった時に私はそのドラムパターンから「ホエン・ユー・ウォーク・スルー・ミー」が始まったのかと勘違いして、「また、ヴォックスの曲?」と思いました。
そう、私はヴォックスの曲よりソロの曲を聴きたかったのです。
「メタル・ビート」からの曲がまだ1曲も演奏されていないのが気がかりでした(そして、ついに演奏されることはなかった!)。
そして、「しすてむず、おぶ、ろめ〜んす!」とジョンによって紹介されたその曲で本編は終わってしまいました。
でも、アンコールでとっておきが用意されていました、「ザ・ガーデン」です。なにをかくそう、この曲が私は一番好きだったのです。
ただ、長いし地味だし、演奏してくれるかどうか半信半疑でした、それをアンコールで演奏してくれるとは!。
この曲が無かったらこんなにジョンのことが好きになったかどうかわからないというぐらい、私にとっては重要な曲です。
そして2度目のアンコール。とびっきり情緒的な「ユア・ドレス」です。コーダ的にヴォコーダーと同期させた歌が延々と続き、夢心地のままコンサートは終了しました。
もう20年も前の話ですし、自分の中で美化されている部分もありますが、それだけジョンのことが好きだと理解していただければ幸いです。
正直言って、あの日のことは自分でもきちっと書き記しておかなければとずっと思っていました。
こういう機会を与えていただいて感謝しています。
そして、何よりもジョンが現在も音楽活動を続けているということが嬉しくてたまりません。
私は一生聴き続けていきたいと思っています。
ガリノイズ こと 佐藤信昭 <djgari@r4.dion.ne.jp>
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